産前産後休暇<男女雇用機会均等法>

仕事をされている方は、産前産後休暇にも興味があるのではないでしょうか?

出産を控えた妊婦さんのための妊娠・出産に関する豆知識

産前産後休暇

●産前産後休暇(産前6週、産後8週が原則)

出産を予定している女性労働者は、請求すれば出産予定の6週間前、多胎妊娠(双子以上の妊娠)の場合は14週間前から産前休業を取ることができます。 産前休暇は本人の請求に基づいて与えることになっています。 週3日間のパートタイマーなどであっても、請求があれば与えなければなりません。

出産当日は産前6週間に含まれます(s25.3.31 基収4057号)。
また、使用者は出産後8週間を経過しない女性を働かせてはならないことになっています。 産後休業は、女性労働者から請求がなくても、与えなくてはなりません。

産後休業は現実の出産日を基準として計算されるので、出産が予定日より遅れたからといって産後休業が短縮されることはありません。
ただし、6週間経過後は、本人が請求し、医師が支障ないと認めた業務に就いても差し支えありません(労基法第65条)。

賃金の取り扱い

休業中の賃金については、法律で特に定めていないので、労使で話し合って決めます。 なお、健康保険に加入していれば、分娩費が支給されますし、また、一定の要件にあてはまれば出産手当金も支給されます。

休暇との関係

産前産後の休業が無給であったり、有給であっても賞与査定上欠勤として扱われるような定めになっている場合には、産前産後休業の一部を未消化の年休に振り替える旨の申出がなされることもあります。
産前休暇は女性労働者の請求をもってはじめて生じるものですから、産前休暇の申請をしないまま勤務を続ける労働者が年休を申請した場合は、年休自由利用の原則があるので、取得させざるを得ないことになります。
なお、産後休暇のうち、就労が許されていない期間については、年休に取得させることはできません。

「出産」の範囲

産前産後の休業の対象となる出産は、「妊娠4か月以上(1か月は28日として計算する)の分娩をいい、生産のみならず死産も含む。」(s23.12.23 基発1885号)とされています。予定日より出産が早まった場合には、結果として、早まった分だけ産前休業が短くなります。遅れた場合は、遅れた分だけ産前休業が長くなります。

「分娩」とは、通常の出産の時期に生まれる正期産のほか、早産・流産・人工中絶などもすべて「出産」に該当し、産休の付与を必要とします。

ただし、流産や人工中絶の場合、産後休業のみとなり、例えば、切迫流産でしばらく入院した後に流産した場合、事前の入院期間は産休ではなく、病気欠勤として取り扱われることになります(s26.4.2 婦発113号)。

●産休を理由とする不利益取扱い

法が労働者に保証した権利の行使を抑制するような取扱いをすることは、公序に反して無効という判断がなされています(日本シェーリング事件 最高裁 h1.12.14)。

また、賞与の支給要件として出勤率が90%以上であることを要するとされていた企業で、産休・育児時間を欠勤として扱い、出勤率が90%に満たないとした事案で、この欠勤扱いは公序良俗に反し無効という判断がされています。

ただし、このような判例の立場を前提としても、産前産後の休業をしたことによって、実際に業績が上がっていないとか、技能が低下している、あるいは就労していた人と比較して技能が向上していないなどの事実は現に存在しますから、これら技能の実質的遅れを査定に反映させることまでも、違法というには無理があります。これは、産前産後の休業そのものを理由とするものではなく、業績や能力を公平に評価してものだからです。

しかし、その基準の曖昧さを拭い去ることはできないという難しい問題は残りますが・・・。